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退任のバレーボール男子・ブラン監督が今季総括「本当のターニングポイントはドイツとの第4セット」コメント全文

2024 8/17 06:00SPAIA編集部
フィリップ・ブラン監督,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

パリ五輪では52年ぶりメダル獲得目指すも準々決勝で敗退

日本バレーボール協会は16日、男子日本代表チームのシーズン総括を発表した。今季で契約が満了し、退任するフィリップ・ブラン監督は協会を通じ「東京とパリの2回のオリンピックを共に経験させてくれた選手たちに感謝したいと思います」と、ともに戦った選手たちを労った。

ブラン監督は2017年から日本代表のコーチを務め、2021年の東京五輪後に監督に就任。昨年のネーションズリーグでは3位、今年は過去最高成績となる2位に入り、1977年のワールドカップ以来47年ぶりに主要国際大会で銀メダルを獲得した。

今夏のパリ五輪では52年ぶりのメダル獲得を目指し臨んだが、準々決勝のイタリア戦でマッチポイントまで迫るもフルセットの末に敗戦。目標としていた表彰台には手が届かなかった。

指揮官は「今大会の本当のターニングポイントは(1次リーグ初戦の)ドイツとの第4セットでした。私たちはセットカウント3-1で勝利を収める十分な可能性がありました。そうなっていれば、精神的にも、また準々決勝前の順位も、完全に変わっていたでしょう」と振り返った。

ブラン監督コメント全文は以下の通り。

「東京オリンピック以降、私たちは着実に進歩」

2017年以降、特に東京2020オリンピック以降、私たちは着実に進歩しました。2023年と2024年はさらに格別な年でした。

皆さんの関心がオリンピックに集中していることは承知していますが、リオデジャネイロで開催されたネーションズリーグ第1週では、髙橋藍選手と石川祐希選手が欠場していたにも関わらず、アルゼンチン、セルビア、キューバ相手に3勝できたことを非常に誇りに思っています。

この数年間ずっとそうであったように、パフォーマンスの向上は常に私のチームマネジメントとオリンピックプロジェクトの中核をなすものでした。高い目標を達成するには、明確でわかりやすい目標と適切な計画が不可欠でした。パフォーマンスを追い求め、2024年6月に世界ランキングが2位となりネーションズリーグでは2023年の銅メダルに続き、銀メダルを獲得することができました。

これらの成功により、オリンピックが近づいても、私たちは平静さを保つことができたはずです。多くの素晴らしい経験を積み、オリンピック前最後で唯一の親善試合となったポーランドとの試合も勝利することができました。オリンピックでのメダル獲得は、非常に高い目標ではありましたが、チームのプレーの質とこれまでの結果を考えれば現実的であるように思えました。

「スタッフや選手たちの夢を達成させてあげられなかったことが本当に悲しい」

しかし、オリンピックは特別な大会です。感情のコントロールがチームのパフォーマンスにおいて特別な役割を担う大会なのです。オリンピック史上最もレベルの高い大会の1つである今回のパリ2024大会ではなおさらです。オリンピックのメダルを獲得して日本のバレーボール競技の歴史に1ページを刻みたいと告げるとき、その任務の重大さに直面し、自分自身の感情をコントロールすることは至極困難です。

準々決勝で敗れたのは事実ですが、今大会の本当のターニングポイントはドイツとの第4セットでした。私たちはこのセットに勝つ、つまりセットカウント3-1で勝利を収める十分な可能性がありました。そうなっていれば、精神的にも、また準々決勝前の順位も、完全に変わっていたでしょう。

もちろんドイツはこの大会中、驚くべきパフォーマンスを見せました。銅メダルのアメリカ、金メダルのフランスに対してフルセットまで追いつめました。勝利は私たちの手の届くところにあり、勝利すれば私たちに大きな自信を与えてくれたことは間違いありません。

私はオリンピックでメダルを獲得することができませんでした。私が手にしたことのない唯一のメダルだっただけに、個人的には非常に残念です。それ以上に、スタッフや選手たちが懸命に努力してきた夢、つまり日本のオリンピックメダリストに名前を刻むという夢を達成させてあげられなかったことが、本当に悲しいです。

ただ、目標を達成できなかったとしても、2022年の世界選手権王者であるイタリアに、準々決勝では信じられないようなパフォーマンスを発揮しました。試合時間は2時間24分、総得点は日本114点、イタリア113点でした。このような結果に対し、非常に残念な思いを抱くことは当然です。イタリアが私たちよりもうまく切り抜けていたとはいえ、マッチポイントが4回あったのですからなおさらです。

この敗戦の責任は誰にもありません。ましてや、すばらしいキャプテンであり、アメリカとの厳しい試合から立ち直ってイタリア戦で32得点を挙げた石川祐希選手に責任はありません。

「もしもう一度やり直すことになっても同じ選択をする」

パリオリンピックの開幕前に選手たちに話したように、確かにオリンピックにおける夢は実現させなければなりませんが、実際には、このオリンピックまでの間に、私たちはすでに日本のバレーボールの歴史を何度も塗り替えてきました。私は代表選手全員をとても誇りに思っていますし、もしもう一度やり直すことになっても同じ選択をするでしょう。

確かに予選ラウンドでは、各選手のパフォーマンスは必ずしも安定していたわけではありませんでしたが、話し合いを重ねた結果、準々決勝でチームの本当の姿を見せて戦うために、すべてのエネルギーを結集することができました。第3セットを落としても諦めない、意志が固く闘志あふれるチーム。敗れはしましたが、ファンの皆さんと日本のバレーボール界は、このチームを誇りに思うことができると信じています。

南部正司男子強化委員長と坂本將眞マネージャーのすばらしい仕事ぶりに心から感謝したいと思います。彼らは準備期間中、チームに最高のコンディションを整えてくれました。そして個人的には、 自分の決断をいつも南部強化委員長に支えてもらっていると感じていました。あらためて感謝します。そして同じく、私たちをサポートしてくれた日本オリンピック委員会、ならびにAチーム、Bチームのプロジェクトを支えてくれたVリーグのクラブや大学の先生方にも感謝したいと思います。

またチームスタッフにも感謝しています。有能で仕事熱心、そして何よりもお互いを思いやることのできる方々と働くことができて幸せでした。私を「サポート」してくれたスタッフの友たち、ありがとう。カントクとして、これ以上の仕事仲間を望むことはできませんでした。チームを率いることは常に冒険であり、私は自分の仕事に情熱を持っています。

そして、東京とパリの2回のオリンピックを共に経験させてくれた選手たちに感謝したいと思います。あなたたちが私を信頼してくれたので、育成においてもプロジェクトの指揮においても、私はその期待に応えようと努めました。私はこれからも、日本代表チームのファンであるだけでなく、あなた方選手たちのファンであり続けます。あなたたちは皆、まだまだ多くのことを見せることができます。そして、スキルを伸ばし続けるためにオープンな心を保ってください。さらにプレーを楽しむことができるでしょう。

そして最後に、私に男子日本代表の監督を任せてくれた日本バレーボール協会に感謝します。川合俊一会長、役員および職員の皆さん、ご協力くださりありがとうございました。私たちの共同作業は本日をもって終了します。今回は決断のタイミングが合いませんでしたが、近い将来、また一緒に仕事ができる機会があることを願っています。

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