上位人気馬6頭による激戦
ダート中距離戦線は前年12月から2月にかけてJRAのGⅠが続き、サウジ、ドバイそして地方交流重賞と怒涛の如く進む。国内戦線の上半期総決算は大井の帝王賞(7月2日開催)。ここに向けてJRAダート重賞もマーチS、アンタレスS、平安Sと活発になる。
マーチSはハンデ戦だが、アンタレスSは別定のため、実績馬も出走しやすい。本命は同じく別定となる次の平安Sかもしれないが、出走馬の顔ぶれは着実にそろう。ベテランから4歳世代まで入り乱れる一戦。賞金加算を巡る熱い戦いに注目しよう。
ここからは過去10年分のデータを使用してアンタレスSを展望する。

まずは人気別成績から。1番人気【4-2-1-3】勝率40.0%、複勝率70.0%、2番人気【1-2-3-4】勝率10.0%、複勝率60.0%、3番人気【2-3-1-4】勝率20.0%、複勝率60.0%と上位人気は堅調。ダート中距離はそう紛れず、力通りに決まりやすい。波乱上等のハンデ戦・マーチSを比べると、やはり別定戦になる分、力量比較もつきやすい。
勝ち馬はすべて6番人気以内であり、7番人気以下はたまに激走するぐらい。確率で考えると、上位6頭の競馬になりそうだ。

年齢別では、4歳【1-4-2-24】勝率3.2%、複勝率22.6%に対し、5歳【4-2-2-23】勝率12.9%、複勝率25.8%、6歳【3-3-5-39】勝率6.0%、複勝率22.0%と5歳を中心に年上が優勢。例年、上半期は芝も5歳馬が総じて強い傾向だが、ダートはさらに顕著であり、やはりダートは5歳から。4歳だと少々、経験値の差が出るようだ。
さらに7歳以上も【2-1-1-43】勝率4.3%、複勝率8.5%と見限れない。ダート界は年齢に対する考え方を改めないといけない。
マーチS組は着順でくっきり
年齢の傾向には反するが、今年の注目はフェブラリーS3着ミッキーファイトだろう。レパードSを勝ち、ジャパンダートクラシック2着などコーナー4つの中距離戦はベスト。経験が少ない東京マイルで3着なら、今度は負けられないか。ベテラン勢をしのげるかどうか。注目だ。

前走クラス別成績について見ていく。まずは前走GⅠから。【1-1-0-4】勝率16.7%、複勝率33.3%とそう目立つローテーションではないが、結果は残す。
フェブラリーS【0-1-0-3】複勝率25.0%、チャンピオンズC【1-0-0-1】なので、今年初戦のハギノアレグリアス(チャンピオンズC4着)も悪くない。昨年当レースの3着馬でもある。8歳だが、昨秋はシリウスSを勝っており、活力に衰えはない。ちなみにミッキーファイトのフェブラリーS3着は【0-1-0-0】。16年アスカノロマンが好走した。
前走GⅠ以外の重賞に注目すると、東海Sが【2-0-2-6】勝率20.0%、複勝率40.0%。今年のプロキオンSに置きかえられる。5着以内【1-0-0-3】、6着以下【1-0-2-3】で着順不問。7着オメガギネスも問題ない。シリウスS2着以降、重賞10着→7着をどう考えるか。2戦ともゲートに課題があった。もともと出遅れが多かったが、最近はそこから上手くリカバリーできていない。間隔をあけて立て直されたか注目だ。
マーチSは【0-2-3-45】複勝率10.0%。直近のダート中距離重賞だが、そのつながりは薄く、取捨選択が難しい。だが、着順をみると、4着以内【0-2-3-8】、5着以下【0-0-0-37】と傾向くっきり。4着以内だけを拾えばよく、今年は4着ブレイクフォースを買えばいい。

前走オープン・Lは【1-3-2-38】勝率2.3%、複勝率13.6%。ここも傾向ははっきり出ており、前走中京【1-2-1-6】勝率10.0%、複勝率40.0%と好走はほぼここからしか出ない。それも春開催の名古屋城Sが【1-2-1-6】。だが、今年、名古屋城Sは行われず。正確には夏開催に移され、8月30日に施行される予定だ。3月に阪神で行われたレグルスS(阪神ダ1800m・OP)がかわりになるだろうか。
レグルスSからは1着マーブルロック、7着マリオロードが参戦。このレースは前半1000m通過1:01.6の平均ペースからマーブルロックがしぶとさをいかした。当然、今回はマークされる立場になる。
ほか、冬の重賞除外からリズムに乗りきれないヤマニンウルスは1400mのコーラルSでも好位で競馬しており、中距離で本来の形を取り戻したいところ。マーブルロックをマークするだろう。この先行争いも注目だ。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。
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