牝馬一冠目をめぐる争い
今週日曜、阪神競馬場でGⅠ桜花賞が行われる。阪神JFからの直行ローテで臨む2歳女王アルマヴェローチェに対し、トライアルを勝利したショウナンザナドゥ、クリノメイらがリベンジを目指すほか、初対戦のエンブロイダリーやエリカエクスプレスなども参戦。フルゲート18頭が揃った。
阪神JFが桜花賞と異なる京都開催だった上、人気通りの結果とならなかった。さらに前哨戦も波乱気味で混戦模様となっている。果たして牝馬三冠最初の一冠を手にするのはどの馬か。過去10年のデータから検討する。
混合重賞での実績を評価

<桜花賞 前走レース別成績>
阪神JF【3-2-0-4】勝率33.3%/連対率55.6%/複勝率55.6%
チューリップ賞【2-8-5-33】勝率4.2%/連対率20.8%/複勝率31.3%
うち阪神JF3着以内【1-4-2-8】勝率6.7%/連対率33.3%/複勝率46.7%
フィリーズレビュー【1-0-2-42】勝率2.2%/連対率2.2%/複勝率6.7%
クイーンC【1-0-1-18】勝率5.0%/連対率5.0%/複勝率10.0%
フェアリーS【0-0-1-6】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率14.3%
アネモネS【0-0-0-20】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%
今年なんといっても予想を難しくしているのが、前述の通り阪神JFが京都開催であった点。ローテーションに関する過去データを鵜呑みにできない。ただしコースは違えど2歳女王決定戦という立ち位置は同じで、メンバーレベルは担保される。GⅠで好成績の馬は評価したい。
その前走阪神JF組が【3-2-0-4】とやはり好走率が高い。勝ち馬なら【2-1-0-0】とオール連対。2着馬が【1-1-0-2】で、ほか6着と11着から臨んだ馬は2桁着順であった。
ブラウンラチェットについて考えると、そもそもアルテミスS好走馬は桜花賞であまり結果を残しているわけではない。前年アルテミスSの3着以内馬が【3-2-0-14】複勝率26.3%で、勝ち馬でも【1-2-0-7】同30.0%。京都から阪神に替わるとはいえ、阪神JF16着を覆すとの評価はできない。
次にチューリップ賞。全体成績は【2-8-5-33】と悪くないものの、GⅡ昇格後(2018年以降)は【0-5-3-23】複勝率25.8%とむしろ下がっている。これはおそらく近年の有力馬がとるローテーションが関係しており、阪神JF好走馬がチューリップ賞を使わず直行することが増えたのが一因だろう。
実際、チューリップ賞組のうち「前年の阪神JF3着以内馬」は【1-4-2-8】複勝率46.7%と好成績で、それ以外での好走例はGⅡ昇格後4頭のみ。3年ぶりにこのローテに該当するビップデイジーを、同馬に先着したウォーターガーベラ、クリノメイよりも重視する。
短距離馬が集まりやすく、距離延長にもなるフィリーズレビュー組は【1-0-2-42】とやはり厳しい成績。ただし、阪神JFで5着以内だった馬が3頭好走している。阪神JF4着馬で距離延長も痛手でないショウナンザナドゥにはチャンスありだ。
クイーンC組は【1-0-1-18】。桜花賞で5番人気以内に推されても【0-0-1-10】と物足りない成績で、桜花賞を敗れてオークスで着順アップという例が多い。エンブロイダリーも東京の方が合いそうな馬であり、ここでは見送る選択肢もある。
フェアリーS組は【0-0-1-6】。21年にファインルージュが8番人気3着に入ったのみで、それ以外は全て二桁着順。2戦2勝で強い競馬をしたエリカエクスプレスは人気が予想されるが、過剰人気を疑いたい。
アネモネSは20頭出走して全滅。全馬7番人気以下と人気にもならないが納得の結果で、今年も穴を空ける存在は見当たらない。エルフィンS組は【1-0-1-3】。デアリングタクトという外れ値がいる上にデータ数が少なく、あまり参考にはならないか。
最後に、前走に限らず「牡馬混合の1400m以上、10頭立て以上の重賞で3着以内がある馬」が【6-1-0-13】、5番人気以内だと【5-1-0-3】となる。想定人気を見る限り、これに該当しそうなのはアルマヴェローチェとリンクスティップ。この2頭には重い印を打ちたい。
ローテが好印象、安定感あり
◎ビップデイジー
2戦2勝で迎えた阪神JFは1枠1番からスタートが良くなく、後方からの競馬だったが、直線で外に出すと勝ち馬と同じように伸びて2着。展開が向いたことや、上手く乗られたことを加味しても濃い内容だった。そこから直行ローテをとらずチューリップ賞を使ったことも高評価。先行策をとって3着だったが、2着馬ウォーターガーベラには新馬戦で一度勝利しており、これが実力を出し切った走りではないだろう。GⅠ連対かつ同コースも経験したという面で安定感は最も高いと考える。
◯リンクスティップ
新馬戦は2着。当時の勝ち馬ミッキーゴールドはその後若駒S2着、若葉S3着の実力馬だ。未勝利を快勝して臨んだきさらぎ賞はメンバーがハイレベル。勝ち馬サトノシャイニングは東スポ杯2歳Sの2着馬で、3着馬ランスオブカオスは朝日杯FS3着、そして次走チャーチルダウンズCを好時計で制した。牝馬限定戦を使っていないため力関係は不明だが、牡馬の一線級と戦ってきた馬。あっさり突き放してもおかしくない。
▲アルマヴェローチェ
札幌2歳Sではハナ差2着とこちらも牡馬相手の重賞実績がある。阪神JFは外差しが効く舞台であったことを踏まえても、上がり最速で完勝と言えるものだった。札幌2歳Sが洋芝の重馬場という特殊な条件でメンバーレベルに疑問があったこと、阪神への適性が不透明である点など不安材料もあるが、これ以上は評価を下げられない。
以下ショウナンザナドゥ、エンブロイダリー、エリカエクスプレスまで印を回す。買い目は◎-◯▲△の馬連と、◎◯-◎◯▲-6頭の3連複で勝負する。
▽桜花賞予想▽
◎ビップデイジー
◯リンクスティップ
▲アルマヴェローチェ
△ショウナンザナドゥ
×エンブロイダリー
×エリカエクスプレス
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。
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