データで見る「穴候補3頭」
今週日曜の阪神メインは桜花賞。その名の通り桜の時期に行われる、3歳牝馬のマイルGⅠだ。今年はカレンダーの関係で満開から1週間ほど遅い施行になってしまうが、近くにお住まいの方はぜひ華やぐ競馬場の雰囲気を満喫してみてはいかがだろう。
このレースは過去10年で10番人気以下が【0-0-0-88】と馬券に絡んでいない。高配当を狙うにせよ、突拍子もない人気薄を買うよりは「中穴」くらいのエリアで魅力的な馬を見つける意識がよさそうだ。その点を念頭に置きつつ、様々な切り口のデータを駆使して3頭の穴候補を導き出した。
チューリップ賞組は勝ち馬より「負けた馬」を狙え ビップデイジー
まず1頭目はビップデイジー。デビュー2連勝で臨んだ阪神JFでも2着に好走したが、今期始動戦のチューリップ賞は3着止まり。この敗戦を受け、2歳女王アルマヴェローチェのみならず新興勢力のエンブロイダリーやエリカエクスプレスにも人気を譲ることになりそうだ。

有力馬が「直行」を選択することが増えた昨今でも、トライアルの中で唯一機能しているのがチューリップ賞。過去10年の桜花賞で、前走チューリップ賞組は【2-8-5-33】複勝率31.3%、複回収率101%となっている。
ただし、その勝ち馬は【0-2-1-8】複勝率27.3%、複回収率43%と振るわない。むしろ2着以下に敗れた馬の方が【2-6-4-25】複勝率32.4%、複回収率118%と優勢だ。本番と同じコースでありながら、展開の違い、馬場状態の違い、そして「仕上げの本気度」の違いなどにより、着順の入れ替わりが発生する。
特に狙い目となるのは「チューリップ賞で5番人気以内に推されて負けた馬」【2-5-4-12】複勝率47.8%、複回収率177%。高い確率で馬券に絡む上に、前哨戦の負けでオッズ的にも旨味がある。
今年の該当馬はビップデイジーとナムラクララ。どちらも捨てがたいが、前走が休み明けだったぶん上積みが見込めるという意味で前者を選んだ。近親にクリソベリルやマリアライト、ダンビュライトらがいる良血で、本質的にはもう少し長い距離でもよさそうなタイプ。一冠目から結果を出せるようなら、オークス、秋華賞に向けても視界が開ける。
「前走重賞で1番人気だった馬」は複回収率130% ブラウンラチェット
続いてはブラウンラチェットを取り上げる。アルテミスSを1:33.8、ラスト2F11.1-11.0という素晴らしい内容で勝利した馬。阪神JFでは1番人気にも推されたが、全く力を出せず16着に沈んだ。今回はそれ以来の実戦となる。

前章の話とも少し重なるが、桜花賞では前走の「着順」より「人気」が重要なヒントとなる。過去10年で「前走1番人気馬」は【7-3-5-26】複勝率36.6%、前走重賞組に限ると【7-3-4-17】同45.2%、単回収率234%、複回収率130%。今年は先に名前を挙げたビップデイジーと、このブラウンラチェットの2頭が該当する。
ブラウンラチェットの焦点は結局、あの大敗をどう見るかだろう。データでも「前年の阪神JF10着以下馬」は【0-0-0-14】でお世辞にもいいとは言えない。ただし今年に限っては「阪神JFと桜花賞の開催場が違う」という特殊事情がある。
コースの特性を簡単に説明すると、上がり3Fのキレ味勝負になりやすいのが東京と阪神外回りのマイル。一方、京都外回りマイルは3~4角の下り坂から4Fの持続力勝負になるため、トップスピードが生きない反面、中距離向きの馬が好走しやすいという違いがある。
実際に昨年の阪神JFは例年好成績なアルテミスS組が全滅を喫し、1800mからの距離短縮馬が1~3着を占める珍しい決着だった。この世代に限り、阪神JFと桜花賞は直結しない可能性がある。
個体の事情で言えば、前走時は初の関西遠征で馬体重-12kg。道中は折り合いも欠き、心身ともにベストのコンディションでは走れなかった。立て直しに成功してアルテミスS時のパフォーマンスが発揮できれば、GⅠでも勝負になって不思議ない。
赤松賞の「後半5F57.7秒」に大器の片鱗 マピュース
ラストの3頭目はマピュースを選ぶ。注目は2走前の赤松賞。勝ち時計1:33.9も同コースのアルテミスSと遜色ないものだが、なにより「レース後半5F57.7秒」が出色の数字だ。

東京芝1600mの2歳戦で「後半5F57秒台」だったレースはこの赤松賞を含め、1986年以降で11例しかない。その勝ち馬(10頭)は現3歳の3頭以外だとグランアレグリア、サリオス、ナミュール、ライトクオンタム、ボンドガール、チェルヴィニア、エコロブルーム。いずれも後に重賞勝ちまたはGⅠ連対以上の実績を残した。
マピュースら現3歳を含む10頭の3歳(限定)重賞成績を調べると【6-7-2-7】複勝率68.2%。高い確率で好走しており、複回収率も135%とプラス圏内だ。マピュースも今年いっぱい、同世代とのレースでは追い続ける価値がある。
前走のクイーンCでエンブロイダリーには2馬身半差を付けられ、完敗と言わざるを得ない。ただ、この馬の走破時計1:32.6も3歳2月時点としては十分すぎるほど優秀なタイムだった。レースレベル自体が極めて高かった。同じだけ走れば、エンブロイダリーを逆転できずとも馬券に絡むチャンスがある。
《ライタープロフィール》
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、Xやブログ『競馬ナイト』で発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。
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