5月に腰のヘルニア手術を経て8月に復帰
女子プロゴルファーの24歳、原英莉花にとって今季は腰の手術から国内メジャー制覇、スコア誤記による失格まで山あり谷ありの1年だった。
すらりとした173センチの長身を生かした豪快なスイングで大きな将来性を感じさせる「黄金世代」の1人。「特に今年はいろんな試練がありましたが、今までよりも自分らしく喜怒哀楽激しく、全てを楽しめた気がしています」と自身のインスタに実感を込めてコメントした通り、ジェットコースターのようなシーズンだったのだろう。
3月のTポイント×ENEOSで3位に入るなど、春先はまずまずの好スタートだった。しかし慢性的な腰痛に悩まされながらプレーが続いた5月、腰のヘルニア手術を決断。「正直怖かったですが、動けなくなってやっと決心することができました」とSNSで明かしたように「またゴルフができるか」と選手生命にも不安を募らせるほど華やかなプレーとは対照的に状況は深刻で、8月のツアー復帰まで長くて苦しい時間を要した。
それでも苦境を乗り越え、復帰から8戦目となった10月1日は国内メジャー、日本女子オープン選手権で通算15アンダーをマークして3年ぶり2度目の制覇を達成した。通算5勝のうち四大大会で3勝という勝負強さが際立つ復活Vでもあった。
一方で来季の米ツアー参戦を目指し、直後の10月中旬に参戦した米フロリダ州での2次予選会ではスコアの誤記で失格する痛恨のミス。「今回のような、プレー以外のミスは自分のポンコツさに胸が苦しいですが、同じミスは2度としないように反省し、後ろ向きは捨ててまた目の前の一打を真剣に戦います。失敗も成功も振り幅が大きい自分ですが、良いも悪いも過去」と真正面から悔恨を受け止めた。
パーオン率3位、ツアー屈指の飛距離は相変わらず
今季のプレーをデータで振り返ると、パーオン率は3位。持ち味であるティーショットの平均飛距離は255.21ヤードで8位とツアー屈指の飛ばし屋ぶりは健在だ。
トータルドライビング(ドライビングディスタンス順位とフェアウエーキープ率順位を合算した値)は3位、ボールストライキング(トータルドライビング順位とパーオン率順位を合算した値)は1位。一方でグリーン上では苦しみ、平均パット数(1ラウンド当たり)は30.6143で87位と安定感を欠いた。
リカバリー率(パーオンしないホールでパーかそれより良いスコアを獲得する率)も74位、サンドセーブ率(グリーンサイドのバンカーに入ってから2打かそれより少ない打数でカップインする率)も82位と振るわなかった。
師匠のジャンボから受け継ぐ前向きパワー
そんな浮き沈みの激しい1年で、原英莉花が見せた日本女子オープン選手権での涙ながらの優勝インタビューは実に印象深かった。
「どん底を経験して、常に何事も前向きに捉えられるようになった。(ベッドで)寝ているより、予選落ちでも戦っている方がかっこいいんじゃないかと思って、前向きにプレーしていたのが一日一日つながったのかなと思う」
高校時代から師と仰ぐゴルフ界のレジェンド「ジャンボ」こと尾崎将司から受け継ぐ「常に前を向くパワー」を体現し、勝負強さを示した形だった。
そして今季を振り返るインスタではこんな言葉で締めくくった。「最後に今年学んだこと! “色んな決断を自分でしていくこと” 自分で決断して動いた事って、どんな結果になったとしても、納得してるし後悔してないから。なにか人のせいにしたくなっちゃう時があるのは、結局どこかで人に決断を任せた自分が悪いのさ! さぁ、これを胸にまた前を向いて」
黄金世代を引っ張る勝みなみや畑岡奈紗、渋野日向子らもそれぞれ自分の殻を破ろうと海外で懸命にゴルフの腕を磨く日々。新たな決意を胸に一回り成長した来季の原英莉花が国内外でどんなプレーを見せてくるのか期待が高まる。
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