逆転Vで男女通じて日本選手初の快挙
鮮やかな逆転Vでトレードマークの笑顔が輝いた。
3月23日までカナダ・モントリオールで行われたフィギュアスケートの世界選手権で、女子は23歳の坂本花織(シスメックス)がショートプログラム(SP)4位の出遅れからフリー1位で逆転し、合計222.96点で1968年のペギー・フレミング(米国)以来、56年ぶり8人目の3連覇を達成した。
ウクライナ侵攻に伴う制裁で強豪ロシア勢が2022年から国際大会での除外が続いている現状とはいえ、3連覇は男女全種目通じて日本選手初の快挙。特に振り付けの細部まで心血を注いだフリーで「ミステリアスな大人の女性」を演じた総合力は持ち前の伸びやかなスケーティング技術も生かして圧巻の出来だった。
通算3度の優勝は浅田真央に並び日本勢最多。中継局のインタビューに「いまの自分が納得できるものができたのですごくうれしい。最後まで自分落ち着け、自分落ち着け、と思いながらやった」と振り返った通り、ノーミスでフィニッシュすると、そのまま氷にひざまずいて感極まった姿が3連覇への重圧の大きさを物語った。
フリーは技術点、演技構成点もトップ
フリーは3.69点差をSP4位から追う展開。「焦りとか緊張とかいろいろあった」という心境の中で、冒頭に代名詞のダブルアクセル(2回転半)を決めると流れに乗った。
続く3回転ルッツ、3回転サルコーと着氷。基礎点が上がりスタミナが問われる後半ではさらに底力を発揮し、フリップ―トーループの連続3回転、2回転半―3回転―2回転の連続ジャンプを次々と決めた。
技術点は堂々のトップで3本全てのスピンは最高のレベル4。表現面を評価する演技構成点も全3項目で9点台とライバルを圧倒した。終わってみればフリー1位の149.67点をマークし、合計で2位の新鋭イザボー・レビト(米国)と10点以上の差をつけて勝負強さを印象付けた。
今季は国際大会全勝の強さ、来季以降へ「経験値」
今季は初制覇した2023年12月のグランプリ(GP)ファイナルを含めて国際大会を全勝で終えた。中継局のインタビューでは世界選手権3連覇の達成に「また一つ自分も強くなれたと感じた。来季へ経験値が上がったかな」と満面の笑みで表現した。
勝負強さを支えるのは圧倒的な練習量。4分間のフリー終盤でもスタミナを支える心技体の強化がある。長引く紛争でロシア勢不在も背景にあるが、世界女王として「常に勝ち続ける難しさ」は強さを探究し続ける日々で身に染みていると自覚する。それが来季以降への「経験値」であり「ロシア勢が戻ってきても勝てる選手」を胸に誓う。
銅メダルを獲得した2022年北京冬季五輪後は一時期モチベーションが低下する時期もあったともいうが、日々鍛錬の精神を失わず、心身の充実ぶりが際立つ。「私自身、まだ成長段階」。その先にある2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪出場へたくましく成長している。
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